第十三話

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 スクリーン上ではエンドロールが流れていた。「脚本・監督 伊藤大祐」の文字を見て心が躍る。ぱちぱちぱちと、開演前よりも大きな拍手が響いた。 「以上で終了です。ご覧いただきありがとうございました!」  がやがやと満足気な空気を醸しながら、来場者は三々五々教室を出ていった。 「ふぅー、この回で1度当番交代だ。」  大祐が未だ最前列の席に座ったままの俺に話しかけてきた。 「すごくよかった。」 「めちゃくちゃ褒めてくれるね。」 「おーい、春日、真里ちゃんと栄太って来た?」  春日が俺たちの近くに寄ってきた。 「まだだけど、もう数分で来るってよ。」 「俺引き継ぐから、お前ら遊びにいってもいいよ。」 「それは悪い。」  俺が急いで言うと、春日は首を振った。 「たこ焼き1つもらったしいいよ。」 「じゃあお言葉に甘えて。」  大祐が後頭部に手をやって答える。 「俺は浪内に言ったの!」 「まあいいや、行けよ。」 「あはは、行こ!」  大祐は俺の手を引っぱった。立ち上がって出口に向かう。 「ありがとう、魔神。」 「誰が魔神だよ!」  俺たちは笑いながら教室を出た。熱気が充満していた教室と違って、廊下の風が涼しかった。
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