第一話

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第一話

「ねえ、最近カップル増えたよね。」  座ったままくるりと体の向きを変えて、何気なさを装って呟いた。 「まあそりゃあな。文化祭マジックを侮るなよ」  日誌に大して意味のない文字列を書き連ねる春日(かすが)は、顔も上げずに答える。今日は日直だったらしい。その割には黒板を消している姿を一度も目にしていない。 「僕にもそろそろ恋人ができる頃合いだ。」  僕が動き続けるシャープペンシルの先を眺めつつ言うと、春日はがばりと顔をあげた。 「え、いい感じの子がいるってこと?」 「いや、特には。」 「は?じゃあ恋人ができそうってどういう意味だよ。」 春日は訝し気に僕を見る。 「どういう意味って、そのままだよ。僕だったら何もしなくても恋人ぐらいできるだろ。ただでさえ文化祭の準備で親密になりやすいんだから。」 僕が平然と言ってのけると、春日はやれやれと手を上げた。 「見てくれがいいとそういう感覚になっちゃうのかね。聞いて損した。」 「それで本題なんだけど。」 「おお、何?」 「何回かデートの下見というか、リハーサルをしておきたいんだ。付き合ってくれない?」 「は……?」
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