第一話

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 僕は至って真剣だった。恋愛経験がないわけではないし、過去の相手も何か言ってきたわけではない。けれど、完璧なデートを一度も実現できていない気がするのだ。  そもそも、何を持って完璧なのかもわかっていない。水族館に行けばいいのか、動物園に行けばいいのか。すべての会計を僕が持てば喜ばれるのか。弁当を手作りすれば胃袋をつかめるのか。未だに結論は出ていないのだ。最近は多少お金もあるし、一端のデートをしなければ恰好がつかない。 「よく考えてみてくれよ、完璧な僕が拙いデートなんかしたら幻滅されるだろう。」 「デートに正解なんてないって。そのままのお前でいいよ。」 「よくない!」  ばし、と僕は日誌を叩いた。春日は呆れて僕を見ているが関係ない。どうにかしてデートのリハーサルをしたい。王子と呼ばれる僕の名声を傷つけたくない。 「お前……。好きな子もいないうちからデートの練習ってとち狂ってるよ。」 「頼むよ。暇だろ?」 「まあ、ちょっと待てよ。今さ、一瞬付き合ってやろうかなと思ったけど、俺お前の恋人役なんてできねえわ。絶対茶化すし、笑っちゃうもん。」 「あー、たしかにそうかもしれないな。僕も笑っちゃいそう。」  よくよく僕と春日がデートしている様子を思い浮かべてみたが、状況が滑稽すぎて5秒おきに吹き出してしまいそうな気がした。春日を友達以上に意識したことはない。これからもないとは断言できないが、少なくとも今のところは。春日は友達として優秀すぎるのだ。 「だろ?あのさ、適任がいるよ適任が。」  春日は僕の提案にじわじわとおもしろみを感じてきたのか、日誌を書く手は完全に止まっていた。 「7組の浪内(なみうち)って奴知ってるか?」
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