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機会は、わりとすぐ訪れた。
コンビニに寄ったら、漫画雑誌を立ち読みしているケイに出くわしたのだ。
わたしはケイに近寄って
「ねえ……」と声をかけた。
「わっ。なんだよ」
ケイは顔をあげ、わたしを一瞥すると、また漫画雑誌に目を戻した。
そうしながら、「なんか用?」と、そっけない口調で聞いてくる。
わたしは少し迷って聞いた。
「ケイってさあ、好きな子とかいんの?」
ケイは、ぽかんとした顔をした。
漫画を棚に戻すと、何も買わずに、黙ってコンビニを出て行ってしまう。
わたしもケイのあとを追って、ドアをくぐって外に出た。
目の前の信号が青に変わった。
ケイは、ずんずんと横断歩道を歩いていく。
「ねえってば、いんの、いないの?」
私はケイの背中を追いかけながら言った。
「無視すんなー」
「……なんでそんなこと千波に教えなきゃなんないの」
よく見れば、ケイの髪のすきまからのぞくうすい耳たぶが、ほんのり赤く染まっている。
何この反応。
わたしはちょっと驚いた。
あれ、こいつ。もしかしているんだ、好きな人。
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