風と光と

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通学路にも、新しい教室にも慣れてきた五月のなかば。 クラスメイトの息づかいをさぐりながら、わたしは三人グループの中に、うまく収まることができた。 体育の授業前。 ズボンのすそを折り返した芋ジャー姿で、 「かったるう」 なんて言いあいながら、渡り廊下を歩いていたとき。 向こうから歩いてきた制服姿のケイと目が合った。 ケイが「おう」って声をかけてきたから、わたしも「うす」なんて、軽くあごをあげて返す。 すれ違ったあと、 「誰、今の?」 ユッコがわたしの脇腹をひじを押し付けながら言った。 「けっこうかっこいいじゃん。千波の彼氏じゃないよねえ?」 エナも、興味津々といったまなざしでわたしの顔を見つめてくる。 「えー。そんなわけないし」 わたしは、変なふうにニヤニヤしながら答えた。 母親同士が親友で、お互いの家を行き来するなんてこともあって、ケイとは、小さいころからなんとなく友達だった。 少し前まで私より背が低かったのに、筍のようにスクスク育って、今や180近くあるという大男だ。 横にスッと大きな目が、クールそうにも見えないこともない。 ユッコやエナが言うように、もしかしたらけっこうかっこいい部類に入るのかもしれない。 「彼女はいるのか」「どんな子が好みか」 ケイに聞いてくるようにと、二人におおせつかったわたしは、「面倒くさいなー」なんて顔をしかめてみせながら、まあこれも友達づきあい、「今度ケイに聞いとくわ」などと言っておいた。
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