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と驚いていた。てっきり鵺と対峙した時のような感じになると思っていたのだ。
「当たり前だろう。これは当初から変わっていない。いや、むしろお前の即位が確定したことにより、鬼たちは躍起になってお前を殺しに掛かってくるぞ」
「っつ」
途端に、自分の部屋や健星の部屋で襲われた時の感覚が蘇ってきた。そうだ、鬼は自分を食い殺そうとしていた。あちこちで妖怪と会ううちに、その恐怖がすっかり薄らいでいたのだと気づく。
「まっ、こっちは官軍として総力戦で挑める。左近や俺の自警団だけより強力だし、負けることはない」
恐怖を思い出す鈴音に、どんっと構えていれば大丈夫だと、健星は明日の天気でも話す調子で断言してくれるのだった。
「王になるための初仕事が戦なんて、鈴音は大変だねえ」
「ええ、まあ、そうですね」
呑気に声を掛けて来た月読命に、あなたのせいですけどねと鈴音は言いたくなる。が、そんなことを議論している場合ではなかった。
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