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後宮の一角、凝花舎にて女房装束を纏う人たちから次々に衣装を渡され、鈴音は困惑しながら一つ一つ試着していく。そう、今日行われているのは、即位式の衣装決めだ。
「あらあら、みんな張り切っちゃって」
そこにこの凝花舎をメインに使っている紅葉がやって来て、賑やかねえと華やかに笑った。するとみんな揃って平伏。そう、彼女たちは紅葉の部下であり化け狐でもあるのだ。
「凄い数にビックリしてるんだけど」
鈴音は救いの手が来たと、煌びやかな中華風衣装を纏いつつも、これっていいのと訊ねてしまう。
「みんなが気合いを入れて揃えたものだからね。即位式では一着しか着れないけど、他は別の式典で着ればいいわ」
紅葉は遠慮なんていらないのよと、ほほっと笑ってくれる。が、真面目な公務員の父に育てられた鈴音としては、いいのかなあと気になるところだ。倹約の二文字が頭の中にちらつく。
「それにみんなの王様なんですもの。美しく着飾って欲しいと思うのは当然よ」
「そ、そうかな」
「ええ。特に式典は皆さまに見て頂く場なんだから、ちょっとくらい華美でいいの。結婚式だってそうでしょ」
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