半妖姫と冥界の玉座

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 呆れる鈴音の横で、健星は面白くないとスルメを囓っていた。意外や意外、ライバル意識があるらしい。 「太政大臣なのに」 「ふん。地位に甘んじる奴が一番嫌いだ」 「そ、そう」  健星の方が上でしょという意見は、あっさり却下されてしまった。まあ、その地位で満足しているのならば、他の神様と同様、健星も見守っているだけで現世との仲裁に入ろうとは思わないか。 「皆さま、主上のお目見えです」  そこに紅葉がよく通る声で告げ、月読命がやって来た。宴会準備で大騒ぎしていた妖怪たちは一斉に黙ると、月読命に頭を下げる。やはり二千年勤め上げた王。誰もが普段は会うことのない相手とはいえ敬っている。 「凄い」 「まあ、あっちは神だからな。そこで格が違う」 「ああ」  以前に京都でも言っていたなと鈴音は思い出す。それだけ月読命って凄い人なわけだ。一方、半妖で高校生の自分は一から信頼を築かなければならない。ここに大きな差があるというわけだ。 「生まれながらの王様か叩き上げかの差かあ」 「お前にしてはいい例えだ」
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