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変なところで健星に褒められてしまった。鈴音はちょっと虚しくなる。が、月読命が横に座ったので、無駄口を叩いている場合ではない。
「今日は俺の後継者の鈴音のために集まってくれてありがとう。皆で持ち寄った品々で、楽しい一時を過ごそう」
月読命がにっこりと微笑んで言うと、あちこちから拍手。妖怪たちはそれぞれのやり方で敬意を示していた。
「じゃ、鈴音。乾杯の音頭を」
「えっ、私?」
「それはもちろん。今日の主役は鈴音だし、これは鈴音のために持ってきてくれたものだからね」
立ち上がるように促され、鈴音は戸惑う。しかし、紅葉からシャンパングラスを渡され、立ち上がるしかない。
「ええっと」
そんな立ち上がった鈴音を、清涼殿に集まったみんなが注目している。それはこの前の、官僚たちが居並ぶ時よりも緊張した。
それもそのはず、ここにいる妖怪たちは、新しい王様がどんな人なのか。それを見るためにやって来ているのだ。
誰もが新しい王に期待と不安を抱いている。それがそれぞれの顔からよく解った。
この人たちを不安にさせず、住みやすい冥界を作っていかなきゃいけないんだ。
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