半妖姫と冥界の玉座

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 鈴音もこうやって王になるなんて騒動がなければ、妖怪がこんなにも色々といるなんて知らなかっただろう。しかも現世のお寺がいいと思っている妖怪やこの川がいいと思って住み続けている河童がいることも知らなかったはずだ。  そんな彼らも、新しい王ってどんな人だろうと興味を持ってくれていた。それまで冥界なんて関係ないと思っていたはずなのに、ちょっとは見てみようかと思ってくれたのだ。これは大きな変化だろう。 「結局のところ、選挙と言い出したのも、多くの妖怪に興味を持たせるためだったってことだな。この冥界はほぼ元人間たちが官僚仕事をすることで成り立っている。その関係性を変化させるためにも、半分ずつ血が流れている鈴音は丁度よかったってことだ」  やってらんねえぜとばかりに健星は言うと、ぐびっと瓶ごとビールを飲み出した。もう今日の仕事は終わったということか。 「まあまあ。俺もここまで考えてなかったよ。ま、まあ、紅葉はどこまで読んでいたか不明だけど」  月読命はそんな陰謀だったみたいに言わないでよと眉を下げる。が、紅葉の名前が出たことで、健星も鈴音も、そしてユキも納得だ。
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