半妖姫と冥界の玉座

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「鈴音。笛がなったら大声で『見合って見合って』と言え」 「ええっと、それ」  お相撲のあれですか。そう訊こうと思ったのだが 「敵が見えたぞ」 「おおっ」  後ろの妖怪たちが盛り上がり始める。ああ、ダメだ。みんな酔っ払ってるんだ。鈴音はようやく正しく状況を理解した。だから戦闘が平和的なのか。ケンカ祭りなのか。  妖怪たちは鬼との戦争なんて知らないから、そういうものだと解釈しているってことなんだ。そして、その状況に持ち込んだのは右大臣と左大臣・・・・・・ 「ああ、ダメだ。仕組まれている」  何なのよ、もう。鈴音は頭を抱えるが、盛り上がる妖怪たちに呼応して、鬼たちも 「うおおおおっ!」  と雄叫びを上げている。もう止まらないぞ、これは。  そこに高らかに鳴り響くホイッスルの音。両軍の興奮が一度落ち着くのが解る。 「み、見合って見合って!」  鈴音が大声で言うと、それぞれが駆け出す前の体勢に入る。ええっと、これ、お相撲と同じでいいのかな。一瞬疑問に思ったが 「はっきょい、残った!」
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