72人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
名前を知っているのにそう呼ぶってことは、何か意味があるのか。そう思って訊ねると、狐のユキは目をまん丸にした。
「こ、これは失礼を申し上げました。鈴音様はずっとこちらでご生活なされているので、呼ばれ慣れておらぬのでしたな。おひいさまとは、お姫様のことでございます」
「ひ、姫。この私が?」
「はい。鈴音様は間違いなく九尾狐の御子にございます」
「はい?」
次々起こる謎の言葉の数々に、鈴音はもう何なのと本格的に頭を抱えてしまう。そして無言で部屋を突っ切りベッドに潜り込んだ。
「あ、あの」
「寝る」
「はあ」
本当に疲れているだけならば、寝て起きたら狐はいないはず。私が何かの子で姫だって嘘だと解るはず。そう信じて、本気で眠りに就く鈴音だった。
制服のまま寝たせいか、身体を起こした時には身体がバキバキだった。
「肩が痛いなあ。テストは明日もあるのに」
鈴音がそうぼやいて起き上がると
「肩をお揉みしましょうか」
ユキがひょっこりと顔を覗かせた。
「ぎゃあああ。幻覚があっ!?」
最初のコメントを投稿しよう!