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僕はイタチのように、素早く卓から脱出してトイレへと向かった。
※
「ねえ、あなた赤津くんでしょ?」
トイレに向かう道中、背後から聞き覚えのある声に呼び止められた。
振り返るとそこには、
「げ、藍川さん」
藍川麗子が凛と立っていた。
かつて、良家のお嬢様、容姿端麗・文武両道・温厚徳実と隙のない完璧さを誇っていた彼女は、容姿こそ成長しているが、数年経った今でも雰囲気は相変わらず凛と構える優等生のままだった。
あまり同級生の顔を覚えていない僕だが、彼女の事はとてもよく記憶に刻まれている。
中学三年間ずっと同じクラスだったこともあるが、それ以上に彼女に対してコンプレックスのようなものを抱えていたからだ。嫌な思い出が蘇ってくる。
「げ、なんて失礼ね。二位の赤津くん」
「そのあだ名はやめてくれ・・・・・・」
先程から僕の様子をご覧になってきた皆様ならお気づきかもしれないが、僕はつまるところ何の取り柄のない残念ボーイだ。それは今も昔も変わらない。
だが、そんな僕にも誇れるものが一つある。勉強だ。
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