1パーセントのテレポーテーション

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 勉強ほど平等なものはない。頑張りさえすればその分だけ報われる。僕のような孤独な三枚目でも、勉強ができればそれなりに世間に認めてもらえる。故に勉強、これだけは誰にも負けたくなかったし、負けるつもりも無かった。  だが、何事にも規格外が存在するように、どんな分野にでも天才がいることを当時の僕は知らなかった。  御此木もその部類ではあったが、あいつは勉強家なんて柄じゃなかった。  今僕の前にいる女ーー藍川麗子(あいかわ れいこ)こそ、僕がどんなに努力しても追いつけなかった、紛れもない天才だった。  中学校のテストとはいえ、五教科全て百点を取る事は難しい。当然僕にもそんな神業など為せるはずがなかった。まあ、藍川は違ったのだけれど。  藍川は五教科のテストで毎回合計五百点を取っていた。つまり、全教科百点満点だ。入学から卒業まで、彼女はそのスコアから一点たりとも逃す事はなかった。  まさに、百パーセントの女(僕が勝手に付けたあだ名)だった。  結果は毎回僕がどんなに頑張っても、藍川一位、僕こと赤津二位という不動の順位だった。  二位の赤津という不名誉で不愉快なあだ名は、そんな繰り返す敗北の末に僕についたものだ。
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