6人が本棚に入れています
本棚に追加
勉強ほど平等なものはない。頑張りさえすればその分だけ報われる。僕のような孤独な三枚目でも、勉強ができればそれなりに世間に認めてもらえる。故に勉強、これだけは誰にも負けたくなかったし、負けるつもりも無かった。
だが、何事にも規格外が存在するように、どんな分野にでも天才がいることを当時の僕は知らなかった。
御此木もその部類ではあったが、あいつは勉強家なんて柄じゃなかった。
今僕の前にいる女ーー藍川麗子こそ、僕がどんなに努力しても追いつけなかった、紛れもない天才だった。
中学校のテストとはいえ、五教科全て百点を取る事は難しい。当然僕にもそんな神業など為せるはずがなかった。まあ、藍川は違ったのだけれど。
藍川は五教科のテストで毎回合計五百点を取っていた。つまり、全教科百点満点だ。入学から卒業まで、彼女はそのスコアから一点たりとも逃す事はなかった。
まさに、百パーセントの女(僕が勝手に付けたあだ名)だった。
結果は毎回僕がどんなに頑張っても、藍川一位、僕こと赤津二位という不動の順位だった。
二位の赤津という不名誉で不愉快なあだ名は、そんな繰り返す敗北の末に僕についたものだ。
最初のコメントを投稿しよう!