1パーセントのテレポーテーション

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 電車が来た。僕と彼らも乗り込む。 「・・・・・・」  ガタコト揺れる快速急行。会話はない。  気まずくなって、スマホを弄る。ラインの通知が数百件ととんでもない数になっていた。どうやら、須藤さんの旦那推理大会は同級生のライングループで続行されているらしい。大変だな、須藤さんは。  そうだ。須藤さんといえば一つ気になることがあった。 「なあ霧崎。須藤さんはいいのか?」  もちろん小声。でなければ僕の命が危ない。 「ああ、あいつは二次会に行くんだと。俺は明日仕事だから帰って寝る」 「そういうことね」  偉いなあ、仕事だってさ。僕もこうして悠々自適に遊んでいられるのも今のうちだな。  そんな風に些細なモラトリアムに浸っているうちに、代々木上原に到着。 「じゃあ私ここだから」  藍川が降車する。 「おい」  藍川に軽く手を振ろうとしたところ。背後から霧崎に呼ばれる。そのせいで、藍川を見送り損ねる。 「何さ」  語気は極めて弱く。元ヤンキーに強くは出れない。 「今日は悪かったな」 「なんのこと?」 「お前を睨んだことだよ。あの時のお前、鳩が豆鉄砲を食ったような顔だったぞ」
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