1パーセントのテレポーテーション

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 改札を通り駅を出て、駅前の商店街へと向かう。特に買い物などの用事があるわけではない。ここを通った方が家に近いというだけの話だ。  商店街内の二十四時間営業のスーパーマーケットの前で足を止める。僕が足を止めたのは、別に買い物がしたかったからではない。そこで信じられないものを目にしたからだ。否、それが信じられないものだと理解するのに少々の時を要したからだ。  ーー藍川?  先程代々木上原で電車を降りたはずの藍川麗子が、この登戸駅の商店街スーパーに入店していった。  この状況の異常さは、おそらく僕か霧崎でなければ分からないだろう。  まず小田急線の快速急行についてだ。小田急線は快速急行がおよそ十分ごとに出ている。その間において、時々急行のダイヤが挟まる。  新宿から快速急行に乗り、次の停車駅である代々木上原で降りた場合、急行のダイヤが挟まっていなければ、単純に十分待つことになる(各駅停車は論外とする)。  そして僕と霧崎、藍川が乗った電車は二十二時一分のダイヤだった。このダイヤには急行は挟まらない。つまり、代々木上原で降車した場合、もう十分快速急行の到着を待たなくてはならないのだ。
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