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そして仮に駅を出てタクシーや迎えの車を使ったとしても、代々木上原から登戸までは夜間でも三十分はかかる。当然最高時速百キロで真っ直ぐ街中を走破する電車に追いつけるはずはない。
この事実こそが、僕の感じた異常性の正体なのだ。
これはもはや、藍川は“テレポート”したとしか考えられないのではないだろうか。
※
「まあ、ざっとこんな感じだな」
「なるほどね。故にテレポートと君は捉えたわけだ」
御此木は僕の話を咀嚼するようにそう呟いた。
我ながら、一週間前のことにもかかわらずかなり正確に、あの日の出来事を話せたと思う。僕の記憶力もまだ捨てたものじゃないな。
「で、どうだ御此木。テレポートの真相はわかったのか?」
煽るように尋ねる。たとえ御此木とはいえ、即座に解決とはいかない筈だ。せいぜい僕がここ一週間釈然としなかった分懊悩するがいい。
「うん、大体わかったよ」
なんだと。予想外の反応にたじろぐ。
「い、今の僕の話を聞いただけでか?」
「そうとも」
御此木の深緑の瞳はブレる様子もなく、鋭い輝きを放っている。どうやら出鱈目ではないらしい。
ーーいいだろう。
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