6人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんなに矢面に立たされていた妻を、幸せにすべき妻を、一人残して自分だけ返ってしまうなんて、ちょっと冷酷なんじゃないかなあ」
はっきりと、だが周りくどい言い方。御此木はニヤリと笑う。ムカつく。
「あークソ、わかったよ。とりあえず霧崎のフィアンセは須藤さんじゃない!」
「いいアンサーだ赤津くん。じゃあ本当の霧崎くんのフィアンセは誰だったのか」
「・・・・・・藍川麗子か?」
もはや当てずっぽうとも言える回答だった。根拠と呼べる要素は、新宿駅で霧崎と一緒にいたという事くらいしかない。
「随分と自信なさげだなあ赤津くん。正解なのに」
「は!? んな馬鹿な」
「その要素は山ほどあるよ。新宿駅で霧崎くんと行動を共にしていたこと、喫煙室での結婚に関する言動、霧崎くんの述べた妻に関する人物像との一致、そして何よりも・・・・・・テレポートしたことさ」
喫煙室での藍川の言動は結婚という話題の最中、妙に激しい剣幕で確かにおかしかった。霧崎の言っていた“家柄が良い”という点においても一致してはいる。だが、
「何で藍川はテレポートしたんだ?」
最初のコメントを投稿しよう!