1パーセントのテレポーテーション

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「あんなに矢面に立たされていた妻を、幸せにすべき妻を、一人残して自分だけ返ってしまうなんて、ちょっと冷酷なんじゃないかなあ」  はっきりと、だが周りくどい言い方。御此木はニヤリと笑う。ムカつく。 「あークソ、わかったよ。とりあえず霧崎のフィアンセは須藤さんじゃない!」 「いいアンサーだ赤津くん。じゃあ本当の霧崎くんのフィアンセは誰だったのか」 「・・・・・・藍川麗子か?」  もはや当てずっぽうとも言える回答だった。根拠と呼べる要素は、新宿駅で霧崎と一緒にいたという事くらいしかない。 「随分と自信なさげだなあ赤津くん。正解なのに」 「は!? んな馬鹿な」 「その要素は山ほどあるよ。新宿駅で霧崎くんと行動を共にしていたこと、喫煙室での結婚に関する言動、霧崎くんの述べた妻に関する人物像との一致、そして何よりも・・・・・・テレポートしたことさ」  喫煙室での藍川の言動は結婚という話題の最中、妙に激しい剣幕で確かにおかしかった。霧崎の言っていた“家柄が良い”という点においても一致してはいる。だが、 「何で藍川はテレポートしたんだ?」
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