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そこからまた十年が経った。若者はもう若者と言える歳ではなくなっていた。相変わらず琵琶の練習に熱中していた。
そんなある日、村は土砂降りとなった。若者は空を見ると、雲一つなかった。若者は巨人と話すために山へと向かった。
「巨人よ。今度はなんで泣いているんだ」
巨人は何も返事をしない。
「泣いている理由を教えてくれ」
「悲しくて、悲しくて、泣いているんだ」
巨人が涙声で言った。
「悲しくて悲しくて泣いているとはどういうことだ」
「実は……」
巨人は淡々と語り始めた。今日の朝、巨人の友人が亡くなったらしい。あまりに悲しくて、涙を止められないということだ。
「おい、巨人よ」
若者は叫ぶ。
「そんな時は、涙が枯れるまで泣けばいいんだ」
巨人は黙っていた。
「人の死を悲しめるのは、優しい証拠だ。泣いて泣いて、泣き続ければいい。お前のその優しい涙は、あの世に旅立つ人間が悲しくならないようにするためにあるんだ」
「分かった」
巨人はそう言って、再び大声で泣き始めた。そこから、巨人の友人が亡くなる度に、村には土砂降りの雨が降り注いだ。
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