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「いやー、案外、楽しかったなあ。ドーナツも甘くて美味しかったですし」 「何よ、最初は行き渋ってたくせに」  あの後、私は店員さんに「朱里(あの子)に渡してください」と朱里にあげる予定だった友チョコを預け、店を出た。途中まで方向が同じなので、私と森は一緒に帰路をたどっていた。 「まあ、でも今日は来てくれて助かった。ありがとね」 「いーえ。あ、僕はこっちなので。それじゃ」  やがて歩道橋のところまで来ると、森は私に背を向けた。どんどん階段を登っていってしまう。たぶん、明日からは、また、ただのクラスメイトに戻る。今日がちょっと特例だっただけで……。  何か、もうあいつと会話する機会もないんじゃないかと思うと、ちょっと、もやっとした。  クラスではいつも貝みたいにじっと黙ってるけど、本当はあんなに喋れるくせに……。 『ぼっちだよね』 『まあ、あんな奴と友達になろうとか思わないだろ普通は』  クラスの誰かが、森に向けて言っていた言葉。
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