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◆ 6 ◆
「いやー、案外、楽しかったなあ。ドーナツも甘くて美味しかったですし」
「何よ、最初は行き渋ってたくせに」
あの後、私は店員さんに「朱里に渡してください」と朱里にあげる予定だった友チョコを預け、店を出た。途中まで方向が同じなので、私と森は一緒に帰路をたどっていた。
「まあ、でも今日は来てくれて助かった。ありがとね」
「いーえ。あ、僕はこっちなので。それじゃ」
やがて歩道橋のところまで来ると、森は私に背を向けた。どんどん階段を登っていってしまう。たぶん、明日からは、また、ただのクラスメイトに戻る。今日がちょっと特例だっただけで……。
何か、もうあいつと会話する機会もないんじゃないかと思うと、ちょっと、もやっとした。
クラスではいつも貝みたいにじっと黙ってるけど、本当はあんなに喋れるくせに……。
『ぼっちだよね』
『まあ、あんな奴と友達になろうとか思わないだろ普通は』
クラスの誰かが、森に向けて言っていた言葉。
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