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◆ 7 ◆
森と友達になりたいと思うか否か?
その問いの答えは人によるだろうし、正解もないだろう。
なぜなら単なる好みの問題だから。チョコレート・リングは甘いか苦いか? という問いと同じようなもの。
だったら……、正解がないのなら、私はこっちを選ぶ。
「ねえ!」
呼び止めると、彼は立ち止まって振り向いた。
慣れないことをする緊張で、心臓がはやる。口を開く。
「……あんた、LINEとかやってる!?」
森は一瞬きょとんとした後、ふは、と笑って階段を降りてきた。私の目の前で止まる。
「やってますよ」
「なんで笑ってんの……」
「いや、莉世さんがあまりに必死なので何か面白くて」
「別にそこまで必死には言ってな……、わっ」
その時、車道をトラックが通り過ぎて行って突風が起こった。その拍子に、森の目元を隠すように覆っていた前髪が風でめくれた。
綺麗な琥珀色の瞳があらわになる。
息を呑むほど美しい造形をした鼻筋に、整った眉に、目元のほくろ……。まごうことなき、美青年だった。思わず見入ってしまうほどには。
……もしかして、彼がずっと前髪で顔上半分を隠していたのは、この目立つ瞳の色を隠したかったから……?
ほうける私に、森は乱れた前髪を片手で直し、はにかんで言った。
「クォーターなんですよね」
「アリだわ」
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