雨だれ

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文化祭当時。 生憎の雨だった。 舞台本番30分前。 私は音楽室にいた。 大きく開けた窓から雨音だけが室内に響いていた。 窓辺に座り、ずっと体育館の方を見つめる先輩。 そんな雨に溶けて消えてしまいそうな先輩を見て。 私は──今。 告白しようかと思った。でも出てきた言葉は。 「先輩、私。頑張ってきます。ちゃんと聞いてて下さいね」 『あぁ。ここからだと体育館の演奏もちゃんと聞こえるから大丈夫だ。僕の我がままを聞いてくれてありがとう』 ──さぁ、行って来い。 僕の一番弟子。 そう笑顔で送り出してくれた。 それだけで充分。 そう。 告白はこのあとする。 私は力強く頷き、体育館へと駆け出した。
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