グリーン企業

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     大企業ならば、全部門合同で新入社員の研修が行われるのだろうか。  俺が入ったのは小さな会社なので、いきなり所属部署へ送り込まれる。仕事の内容も会社のマナーも直接、先輩社員から教わる形式だった。  合同研修がないというのは、大学で言えば、一般教養の授業がなく、最初から専門過程で学べるということ。俺はそう理解して、むしろ好ましいと思っていた。  出社初日も前途洋々たる気分だったが……。  その日のうちに「騙された! もしかしたら、ここはブラック企業なんじゃないか?」という気分になってしまう。  俺がこの会社を選んだ理由の一つは、就職活動中の印象が良かったこと。  入社面接の担当官たちは皆、穏やかで優しそうな表情であり、一昔前に流行(はや)ったという圧迫面接とは程遠(ほどとお)い雰囲気だった。「こんな社員ばかりならば、とてもアットホームな職場に違いない」と感じるくらいだった。  ところが、いざ社員としてビルに足を踏み入れた途端、ギスギスした空気が伝わってくる。  一階のロビーを歩く人々だけでなく、俺が配属された部署も、眉間にしわを寄せている者ばかり。  部屋の扉を開けて、まず目にしたのは、 「何をやってるのかね、田中君!」 「申し訳ありません、課長」  奥の席に座っている上司が、彼より年上の部下を叱責している光景だった。    
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