なにかいる

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――ひえっ! 慌てて振り返り、走り出す。 すると別の細い木の横からまた手が。 無視して走っていると、次はすぐ目の前に白い手がぶらんと下がってきた。 それも避けて、息も絶え絶えながら船にたどり着いた。 慌ててエンジンをかけて島から離れようとすると、今度は海の中から何十何百という手が現れたのだ。 そのうちのいくつかは、船のへりをつかんでいた。  ――! 文字通り必死で船を操作して、なんとか帰ることができた。 僕はごく親しい人には島に行ってなにかを見たと言ったが、なにを見たのかは何度聞かれても答えなかった。 とにかく言いたくなかったのだ。 その後、島の噂は相変わらず、あの島にはないかいる、のままだ。        終
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