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第4話 守りの力
「ルークスが帰ってこないと?」
「はい…。今晩、十時にはここへ帰ってくると連絡があったのですが…」
館の士官が不安げに視線を揺らす。
報告を兼ねた打ち合わせをと、ルークスから打診があったのは午前中。何かを発見したらしい。
その事実を館の主人に気づかれないよう、晩餐後に出立するとあったという。
さっさと帰って来ればいいものを。
オレオルはため息を吐きつつ。
「分かった。迎えに行こう。ある程度の準備はしておけ。多分、あれは闇の神子の館だ」
「はっ!」
単身乗り込むからだ。
闇の気配の調査など、下の者へ任せておけばいいものを、自ら行くとどうしてもきかなかった。
守りが効いているからいいものの。
オレオルはそんなルークスを案じて、とある守りを与えてあった。
それはかなり特殊で強いもの。闇の者が彼を犯そうとすれば、強烈な反撃を食らう。強いものでなければそれだけでかき消されるだろう。
役にたつのは癪だが──。
それはルークスの危機を意味するからだ。
自身で施した守りは、その状態を感じ取ることができる。
今もそこから、ひしひしとルークスに闇が迫っているのを感じ取っていた。
あの守りは強烈だ。ルークスを必ず守るだろうが…。
それでも、それだけでは完全に守り切れない。相手がそれで消滅しないような強い者なら、次はないからだ。
誰かが救いにいかねば、ルークスはその命を落すことになるだろう。
そうはさせない。
やっと手に入れたのだ。
あの夜。ルークスが己の腕の中で見せた様を克明に思いだせる。その一つ一つが愛おしかった。
彼から見れば、私は身勝手な男としか映っていないだろうが。
これでも、私は君を深く愛しているのだよ。
「急ごう」
「はっ」
すぐに馬の用意をさせ、部下とともに森深くの館へと向かった。
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