第5話 闇と光と

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「闇の神子の館は?」  オレオルは馬に跨がり、暗い森の先に目を向ける。 「この先です。しかし、奴らも撃って出ている様で。今は炎の部族の者が応戦しております」 「まったく。奴らの親玉はどこにいる? 館にいるのか? ルークスの話しではまだ人の姿をしているようだが…」 「見えてきました! あの屋敷がそうです」  そう言って部下が指示した屋敷は、かなりの時代を経た代物で、廃屋とも見間違う程の建物だった。蔦が城壁を覆い鬱蒼としている。 「さっさと親玉をやって帰りたい所だな…」  うんざりしたようにそう口にした。  光の館に置いてきたルークスを思う。  意識を取り戻せば、なんとしてもあそこを出て、こちらに向かおうとするだろう。  しかし、あの部屋の警備は硬い。それに光の神子の持つ力は使えない様にできていた。  大人しくしているといいが。  ルークスには再び光の守護の力を施した。  次にまた闇が触れても身の安全は確保されている。だが、一度触れられれば解かれてしまう。完全ではない。  その為、ルークスが逃げ出さないよう、厳重に警備させた。  闇の神子はルークスに目をつけたのだろう。 あの光の力を闇に変えれば相当なものになる。しかし。  誰にも触れさせない。あれは──私のものだ。  本人は自覚していないが、ルークスは人を惹きつける。  光の神子は誰もが似たような金髪をしているのに、彼の金糸は光を受けてまばゆく光る。  青い目は透き通り、澄んだ明け方の空の様。肌は白く燐光を放つ。  ルークスは特別だった。闇が彼に目をつけるのは当然だ。  私もうかつだった。単なる調査だと思い込んでいたからな。でなければ、一人でなど行かせなかった。  ふと、先ほどのシンと呼ばれた男を思い出す。ルークスは完全にシンに心を開いていた。思いを向けていた。  それは、自分が得ようとしたものだ。  いつかは身体だけでなくその心も得たいとそう願っていたのに。  邪魔さえ入らなければ、この手に堕ちたはずなのに。それを──。  余計なものと出会わせてしまった。  横合いから突然現れた男に、しかも闇の神子の配下に奪われるなど、あってはならない事だった。  認めない。  なんとしても、二人を引き合わせることを阻止しなければ、そう思った。 「オレオル様、ここは危険です。背後にお下がりください」  前線では闇の神子との戦闘が始まっている様だった。しかし、思ったより敵の手勢が少ない気がするのは気のせいか。 「いい! それより、館の主はどこだ?」 「は! それが…たった今入った報告では、館をたったらしいとのことで…。向かったのここから南西の方角──」 「まさか、光の館か?」 「確かではありませんが…」 「ここはいい! それより光の館にもどる!」 「は!」  隊の長が皆に指示を伝え、すぐに光の館へと踵を返した。  光の館には神子たちがいる。兵が手薄であっても、そう簡単にはやられることはない。  だが、相手の力量を計り切れていない。その主人の力がどれ程のものなのか。  もし、完全に覚醒しているのなら、光の神子が束でかかっても危うい。  それに、館には──。  急いで馬を走らせた。
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