第5話 闇と光と

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「どうした? 具合が悪いのか?」  警備していた兵は、床に伏したまま動かないルークスに不審に思い声をかけてきた。  先ほど、手にした食事のトレーを手にしたまま倒れた。  派手な音が響き、先ほどのやりとりとなる。  声をかけても動かない事に業を煮やした警備兵が、用心しながら扉の鍵を開けた。  そこは二重になっていて、どちらか一方を閉めなければ、一方の鍵が開かない仕組みになっている。それでも、内側の鍵が開けばどうとでもなる。  ルークスは警備兵が近づくまで待った。 「どうした? 意識がないのか?」  兵の手が肩にかかった所で、突然、起き上がり警備兵を押し倒すと、その手首をひねり上げ、背に回した。 「お、おまえ…!」 「済まない。暫く大人しくしていてくれ」  言うと男の背へ首元へ手刀を入れ、気絶させる。兵を端へ避け、鍵を奪い締まっていた外側のドアを押し開いた。  警備が手薄だ…。  オレオルの事だ。もっと厳しく監視していると思ったが。  と、上階が騒がしいのに気がつく。  何があった?  別棟にあった部屋の階段を上がり、上階へと出ると、慌ただしく走る警備兵とすれ違った。光の神子ではない。 「何があった?」  自分が囚われの身になっていたことは、知らなかったらしいその兵士は、目を見開くと。 「ここにおいででしたか!ルークス様。全ての神子はすぐに上階の広間へお集まりください! 闇の神子が兵を引き連れて来たのです!」 「闇の神子が…」 「そうです! 皆、光の神子は広間で対峙しております! どうかすぐに!」 「わかった!」  兵士の言った先、広間へと駆けた。  闇の王、デセーオが乗り込んできたと言うのか。  彼にとって、光の神子は邪魔な存在だろう。力が覚醒したのなら、真っ先に倒しにくるはず。  であれば、力が満ちたと言う事なのか。  シンを思いつつも、それだけでは済まされない事になってきていた。  オレオルは、まだ帰って来てはいないのか…。  自分を抱きながら、配下の者を引き連れ闇の神子の館へ向かうと語っていた。 『君は休んでいるといい』  そう冷たく言い放ち、ルークスが意識を飛ばすまで苛んだ。  確かにルークスの身体には、闇の力を受け付けない力を施してはいるのだろう。  身体に薄く膜を張るようなものではなく、内側からも守護を施す。上級者でなければ出来ない芸当だ。  抱いているようでいて、それは全てに守護を施している。しかし、受け入れられる行為ではない。  これが、シンだったなら──。  ふとそんな思いが過る。  これが、彼の手によるものなら、どれだけ嬉しかったか。  バカな願いだと直ぐに頭を振って打ち消す。  気がつけば辺りが騒々しくなってきていた。広間に近付くにつれ、警備兵や神子が走り回る。  そのうちの一人を捕まえて状況を尋ねた。グレーの着衣は修行中の神子だ。 「今はどうなっている?」 「それが、闇の神子同士で争っているようで…」 「神子同士?」  その言葉にまさかと思った。動悸が激しくなる。急いで広間に向かった。
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