第2話 出会い

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 去った後、漸くゆっくりと息をつくことができた。 「とんだことになったな…」  デセーオが監視の目を向けているのは分かっている。しかし、彼が闇の神子なのか、そうでないのか、見極める必要があった。  容貌から言えば、闇の神子だ。  昔から黒い髪を持つ者は闇に関わるものに限られていた。本人にその気がなくとも、その色から闇に馴染みやすく、結果、引かれていってしまうらしい。  光の神子とは逆だな。  自分はその容姿の影響で光に引かれていった。  先ほどのシンという男も、そうなのだろうか?  闇の髪を持つ男。それは底知れぬ闇ではなかった。その瞳はとても澄んで見えた。  好感を持った欲目ではなく、確かにそれを感じ取ることができた。  しかし、主人のデセーオからは闇を強く感じる。  例え明確な証拠がなくとも、闇の気配を本能で感じていた。  俺に探らせると言う事は、そう簡単には分からないということだろうが。  その痕跡をたどる必要があった。 「っ…」  と、頬に痛みを感じて、思わず声を漏らす。先ほど崖から落ちた時にできたという、傷が引きつれたのだ。  軽いノックの音がして、再びシンが訪れた。 「部屋の準備ができたので、案内させていた だきます──」  先ほどより恭しい態度で入室してきたが、ルークスが頬を押さえているのを目にとめて、すぐに駆け寄った。 「ああ、触れてはダメだ。少しまて…」  言うと、手近にあった箱から薬とガーゼを取り出す。軽く薬を添付した後、ガーゼをそっと乗せ、それを落ちないようテープで貼り付けた。 「しばらく痛むだろうが、こうしておけば傷にはならない。…綺麗な顔に痣は作りたくないならな?」  最後は笑って見せた。 「綺麗などではないさ。とっくに汚れている…」  自嘲の笑みを浮かべ、シンの言葉を遮った。  シンは不思議そうな顔をして見せたが、それ以上は口にはせず。 「部屋へ向かう前に彼らはどうしている? 自由にしてくれるのだろう?」  アルドルとケオの様子が心配だった。 「…ああ。大丈夫だ。ここに残る許可が下りたのはあなただけだ。だが、本来であれば残って欲しくはなかった…。もう少し、俺が気を付けていれば」 「面白いな。シン。もしかしたら、君にも害をなすかもしれない俺を、救おうとするのか?」  するとシンはふいと視線を背け。 「主人のおもちゃにされるのを黙って見ていたくはない…」 「おもちゃ、か。だが、そうなる前に退散するつもりだ。とりあえず、彼らに合わせてくれ」 「分かった…。あなたは部屋で待っていてくれ。そこへ二人を連れて行く」  そう言うと、おもむろにルークスの傍らに立って、背中と足裏へ腕を回してきた。抱き上げようと言うのだ。 「シン?」 「まだ身体が痛むはずだ。多少の打撲は残っている。抱えさせてくれ」  確かに僅かに身体が痛む気はするが、さすがにこの歳では気恥ずかしい。  しかし、シンは躊躇うことなく抱き上げ、胸元へ抱える。互いの体温が触れた箇所から伝わり、酷く身近に感じる。なんとも言えず照れくさくなった。  今更、こんなことくらいで。  何を意識しているのだと思うが、それはきっと相手がこのシンだからだろう。  他の誰かだったら気にもとめないはず。まして、ライオに抱き締められた時とも違う。  俺はいったい…。  揺られるシンの腕の中はなぜか居心地が良かった。
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