ツッコミは大変そうですね(他人事)

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ツッコミは大変そうですね(他人事)

さて、全力ダッシュでなんとか校門の前にたどり着いた菜桜と陽菜だが、 「ま…まって……なお………はやすぎる……」 すでに彼は息も絶え絶えである。それに対して菜桜は、 「えー?陽菜はもっと体力をつけるべきだよ~」 「ちがう…!お前が…脳筋…バカな…だけだっ……!!」 この会話だけを聞くと誤解を招きそうなので言っておこう。けして陽菜の体力がないわけではない。むしろ彼の体力は常人より高い水準を誇る。 だがしかし、 「む、むり……しぬ………みずぅぅぅ…」  死にそうである。 それに対し隣の菜桜は…… 「…あれ、菜桜?」 「ひーなー!学校のホース全部つないだよー!」 ……まぁご覧の通りである。 少し目を離したすきに学校中のホースをつないでそれを全力で報告するぐらいには元気である。 「おまっ…!今すぐ元に戻してこいっ!!あと大声で叫ぶなっ!!」 ちなみにこちらは控えている。 「菜桜ーーー!!!俺にも水ちょうだーーーい!!!」 「ふみゃあッ!?!!」 ツンツン頭に半袖短パン。世の中の運動部へのありとあらゆる偏見を忠実に再現した人間。 「お、おまっ……雪兎っ!!耳元で叫ぶなバカぁっ!!!」 涙目になりながら被害者こと陽菜は思わず叫んだ。 ツッコミもなかなか大変である。 そこに 「おやおや、面白い光景が広がっていますね。」 「うるさいと迷惑の間違いだろ」 「あっ!JoEー!!律ー!!」 悠々とJoEと律が到着。律はくせ毛がうっとうしいのかしきりに髪と眼鏡をいじっている。 ちなみに菜桜は全力で駆け寄ろうとしたが、陽菜に羽交い締めて止められている。 「こ、これで全員か?」 菜桜を羽交い締めながら陽菜がたずねる。 「そうですね。それでは行きましょうか」 JoEは糸目をさらに細めながらにっこりと微笑んだ。  「ところでJoE、この大量の鍵の中から屋上の鍵は見つけられるのか?」 「えぇ、その点について大丈夫です。なにせこの学校の全ての鍵の中で金色なのは屋上の鍵だけですから」 訝しげな律に対し、顎のあたりで切りそろえられた絹の糸の様な髪をさらさらと揺らしながらJoEは笑った。 「それじゃあ行くか……ってあれ?菜桜?雪兎?」 二人がいない。そのことに気づき陽菜は焦って辺りを見回す。 「まさか、誘拐……?! 」気のせいか周りの温度が一気下がった気がする。ひゅっと喉が嫌な音をならす。 最悪の想像が頭をよぎる。 と、そこに 「……ぷっはぁ!水うめぇぇぇ!!」 「おいしい〜」 「………………………………………………………………おい」 ゆっくりと後ろを振り向くと 「「うみゃ〜」」 美味しそうにホースから水を飲む少年少女。 一人は、ぱっつん前髪にこぼれ落ちんばかりの大きな瞳を持つ。年齢にしては幼い印象の可愛らしい少女だ。まるで猫の耳のように跳ねたかみをピコピコ動かしている。 もう一人はツンツン頭で以下略。 陽菜は思わず半眼になった。 そして、 「お前らは何やってんだよっ!!」 盛大に突っ込んだ。 「むむむーむーむむ?」 「水飲んでるんだよ?じゃねえっ!早くごっくんしなさい!ごっくん!!」 水をガブ飲みする雪兎。むーむー言っている菜桜。そして、そこに突っ込む陽菜。 そんな彼らを見て律は驚愕していた。 「なんであいつはあのむーむーで言っている事が解るんだ……?」 「まぁ、菜桜と陽菜は一心同体、二人で一つみたいな所がありますからねぇ……」 菜桜と陽菜のシンパシーについては非常に興味をそそられる所ではあるが、このままでは進まない。 JoEは二回大きく手を叩くとわちゃわちゃしている三人組に声をかけた。 「はい、3人ともそろそろ行きますよー!」 「そうだぞ、置いてくぞー」 「おう!」 「はーい!」 「えっ、ちょっ、待って!?」 三者三様の反応を返しながらバタバタと走ってくる。 「はぁ……」 律はため息をつきつつも、そんな友人達が愛おしくてたまらないのか、 「律、顔がニヤけていますよ」 「なっ、そんなことはないっ!!」
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