2人が本棚に入れています
本棚に追加
芝生の庭を通り、裏山との境に作られた花壇へと歩みを進める。
名前の分からない紫の花が密集して生えた花壇。
少し背の高いその花の根元は葉っぱが茂っており、地面が見える状態ではなかった。
子供の頃、この植物はここに植わっていたのだろうか。
紫色の花があった記憶はないし、先が割れた葉にも見覚えはない。
しかし、確かにここに黒い双葉は生えていたという自信がある。
何故そのような自信があるのかも分からない。
それでも確かにここにあったという根拠のない自信が私を突き動かす。
私はその葉の集団に手を突っ込み、体勢を低くして掻き分けながら双葉を捜した。
あれからもう十数年経つ。
もし同じ場所にあるならそれなりに大きくなっているはずだし、多年草でなければ枯れてなくなっているはずだ。
母親は定期的に庭を手入れしているし、雑草として抜かれていてもおかしくはない。
むしろそこにない方が自然だ。
それでも、何故かここにあるという揺るがない確信が、双葉を捜す私の手を動かし続ける。
最初のコメントを投稿しよう!