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黒い花
何度か葉を掻き分け、少し暗い葉の中を除き見るようにして捜した。
すると、その植物の一番奥の方に、真っ黒い井出達をした一輪の花がそこで花弁を広げていた。
昼下がりの今、外は明るいはずなのに何故だかそこはとても暗く感じた。
薄闇で見えにくいように感じるのに、その真っ黒い花だけは何故か縁取られたようにはっきりと見えた。
とても不思議な感覚だった。
明るいのに暗く、見えないのにはっきり見えるような、何とも言い表せない気持ち悪い感覚だった。
見てはいけないものを見てしまったような不気味さに、私は何故か逃げ出したい気持ちになった。
しかし、私の体は逃げるようには動かなかった。
その花に吸い寄せられるように釘付けになり、意識を奪われたかのように凝視していた。
地面から20センチ程の高さがあるその花の茎には無数の棘があり、コンパスの針のような短く細い棘が隙間なく茎を覆っていた。
その異様な茎の上に、手のひらほどの大きな真っ黒い花が、今にも何かに喰らいつきそうな勢いで花弁を広げ、幾重にも重なり合っている花弁は、一枚一枚意思を持っているような不気味な迫力があった。
子供の頃は双葉しかなかったそこに、今は茎と花だけの真っ黒いそれが真っ直ぐ生えていた。
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