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もふっと、クマのぬいぐるみを抱いたまま天井を見上げて、独りごつ。
しんじてた。
神さまを、あの頃は、信じてたんだ。
ごろんと寝返りを打って目を閉じた。
――幼かったんだ、あの頃は。
◆
次の日学校に行くと、あたしの机が水浸しだった。
……なんでまたこんな、面倒くさいことを……
漏れかけたため息を何とかかんとか呑み込んで。鞄は廊下のロッカーにぶちこんで。のっそりとあたしは掃除用具入れに向かう。雑巾を引っ張り出した。
耳障りなクスクス笑いが聞こえる。
ひとりだけ、誰だか判った。笑い声の主。入学式の日から二週間くらいは仲が良かった女子。いつのまにか、敵に回っていたけど。
そんなもんかな、と思う。
ターゲットはいつだってくるくる変わる。そういう世界で、だから別に彼女に特別怒りなんてわかなかった。
のそのそとした動きで、机を拭く。
怒りとか、悲しみとか、くやしさとか。
こういうことをする奴らは、あたしがそういう感情を抱くことを期待しているんだと思う。だったらなおさら、そんなの、抱くわけがなかった。ただ、面倒くさいだけだ。
「加納さん」
ふと、声が聞こえて。
顔を上げると、奏人とは違う意味で面倒くさい人が立っていた。
「……おはよ、いんちょ」
「これ……」
こわばった顔の委員長がなんだかもうひたすら面倒で、あたしは小さく笑って見せた。
「局地的に雨漏りしたご様子で」
「そん……っ」
「いいからあっち行ってよ。言ったでしょ、昨日」
関わらないでって。
最後のセリフは音に出さず、唇だけで告げた。軽くにらみ上げる。ちょうど、奏人にやるみたいに。
委員長は奏人とは違った。
視線が絡んだのは一瞬で、すぐに彼女はどこかへ駆けていってしまった。
――それでいいんだよ、委員長。
なんて、思ったのはほんの数秒だった。
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