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まぁ、学区でもそれほど頭のいい学校じゃない。それなのに校則とかは意外とうるさくて、どっかに捌け口がいるんだろうとは分析できる。出来るけど、別にそれがあたしに向かなくたっていいじゃないか、と、思う。
悟られなかった、かな。
ふと、思う。
今日のあたし、どっかヘンじゃなかったかな。ちゃんと普通にしてられたかな。奏人、なにか感づいてたりしないかな。大丈夫かな。
大丈夫だろうとは、思うんだ。実際あたしはべつにそんなダメージうけちゃいない。こういうのやるほうが頭弱いってことくらい判ってるし、やられる側にも理由はあるかもしれないけど、大概そんなの後付でなんとでもなるヤツで、大した理由じゃないってのも判ってる。だから別にダメージはないし、家族にだって気づかせていないはずで。だからたぶん大丈夫なんだけど、ちょっと不安なのは奏人が奏人だからだ。
あたしのことは、たぶん、母さんより父さんより、奏人のが知ってるから。
「……だいじょぶか」
きっと、問題ない。だって奏人、今日だって何も言わなかったじゃん。
小さく自分に頷いて、あたしはノートと教科書を広げた。窓の外で、かすれたようなセミの声が一回だけ、聞こえた。
◆
「それだったら、加納さんがやってくれると思いまーす」
どっかのバカの上げたばかばかしい発言に、何故か教室中のバカどもがどっと笑い声をたてた。
……くっだらない。
「え、加納さんは別のも……」
「いいよ別に。大した作業じゃないでしょ」
おどおどしている学級委員長(いわゆる雑用係)に肩をすくめて見せる。眼鏡におさげの典型的容貌の彼女は、外野からの早く帰りたいコールに押されて、小さく頷いた。
「じゃあ……おねがいします」
「おっしゃかーえろー!」
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