あした、シュークリーム日和。

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 ざわめきはいっそう大きくなり、てんでバラバラにみんなが教室を出て行く。そのざわめきの中、小さな声のクセに何故か耳に刺さる言葉が飛んでくる。 「点数稼ぎ、毎回マジキモイよね」  ……あれかな。これは、いわゆるカクテルパーティー効果ってヤツですかね。うるさくても自分に関連する声は聞こえやすいってヤツだっけか。  どっちでもいいけど、点数稼ぎったってこの学校、生徒の自主性云々のせいで、こういう決め事のとき学級委員長しかいないんですけどね。学級委員長の点数稼いで何になるっていうんだろう。  扇風機が空気をかき回す音にまぎれるほどの小ささで息を吐き、立ち上がる。 「いーんちょ」 「あ、加納さん」  ぱたぱたと走りよってきた委員長がペコっと頭を下げた。 「いつもごめんなさい、なんか……」 「いんちょのせいじゃないっしょ。いいよ別に。で、何したらいいんだっけ?」 「あ、あの……秋の体育祭実行委員……」 「うん、それは聞いてる。で、いつから何すりゃいいの?」 「あ、動くのは二学期入ってからみたいで」  委員長のおどおどした声が何となく気に障りながら、あたしは軽く頷いた。 「ンじゃ、今は特に何もない?」 「あ、はい」 「じゃ、帰るね。おつかれ」  ひらっと手を振って背中を向ける。と、その制服のすそを掴まれた。反動でグレーのプリーツスカートが揺れる。 「……なに?」 「あ。あ。えとえと。い、いっしょに帰りませんか?」  ……なにこれ、デート? ◆  なんてのはまぁ、冗談だとしても。  あたしは何故だか委員長と連れ立って地元の商店街を歩いていた。 「っていうか、委員長なんでこっち? 地元こっちなの?」  中学のときには見なかったけどなぁ、と思いながら聞くと、委員長は少し迷ってから頷いた。 「地元というか。家はこっちです。わたし、高校入学と同時に引っ越してきたから」
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