あした、シュークリーム日和。

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「へえ。こんな辺鄙なところに? タイヘンだね。もとはどこなの?」 「横浜です」 「都会じゃん。うーわ。やってらんないっしょ、こんなど田舎」  ヘタすりゃ見渡す限り田んぼ! な場所に出てしまったり、バスだってなかなかなかったりするこんな田舎に、都会から来たらさぞタイヘンだろう。 「そんなことは……。ちょっと不便かな、って思うときはあるけど、自然いっぱいだし、なんかどきどきします」 「はぁ……」 「昔話の世界みたいで」 「そこまで田舎じゃないと思いたいですけどね、生まれも育ちもここのあたしは」  苦笑する。と、視線を感じた。委員長だ。 「なに?」 「加納さんって、いつもそうですよね」 「……、褒めてるのか貶してるのか教えてくれる?」 「あ、そういうんじゃなくて、あの」  委員長は頬を赤くしながら少し口早に続けた。 「あの、いつも、誰に対しても、普通に接してるなぁって、あの」 「ああ」  なんとなく、言いたいことが判った。唇だけで、ちょっとだけ微笑ってみせた。 「――いじめられてるのに普通だって言いたい?」  ――なんて。  これはちょっと意地悪だったかなーなんて思ったけど、口に出したらもう後の祭りだ。知らずのうちに足は止まっていて、あたしと委員長は、人の流れの中で棒立ちになっていた。 「委員長さ、同情かなんか知らないけど、あんまりあたしに関わんないほうがいいんじゃん? 委員長だって、クラスでそんな好かれてるわけでもないみたいだし、ヘタするとターゲットうつるよ?」 「……柏木です」 「は?」  想定外の言葉に、あたしは目を瞬いた。 「なに?」 「柏木です。柏木遥。わたし、委員長って名前じゃないです」  ……め。  んっどくせええ。  おどおどしているくせに、どきっぱりとした口調がなんだか妙に腹たって、あたしは思わず頭を抱える。 「あのさぁ」
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