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「それに同情じゃなくて……あの。わたし、加納さんと友達になれたら、って」
「ともだちね」
「……ダメですか?」
「ダメとかダメじゃないとかじゃなくて、悪いけど信じないんだ、そういうの」
ぺんっと軽く委員長の頭をはたいて、あたしはゆっくり歩き出した。
「他あたってよ」
捨て台詞のように吐き捨てて。
あたしは、あの道へと足を向けていた。委員長は、追ってこなかった。
◆
商店街を抜けて、あの場所へ。
鞄をその辺に放り投げて、あたしは岩の上に腰を下ろした。
「はぁー」
大きく、大きく、息を吐く。
あーあ。あーあ。さすがにちょっと自己嫌悪だわ。あれじゃ完全八つ当たりじゃない。そりゃ、信じられないし信じたいとも思わないのは確かだよ、委員長のあんなくっさいセリフなんて。でも、真正面から否定することはなかったかもしれない。
「もっとこう、オブラートに包んで拒否を……」
「……なにを?」
「わっ!?」
頭上から降ってきた声に、あたしは危うく岩からずり落ちそうになりながら振り向いた。
「か、奏人」
「ごめん。びっくりさせちゃった?」
「……いや、いい」
まだばっくんばっくんいってる心臓をなだめながら、あたしは軽く首を振った。
「ゆずちゃん。隣、座っていいかな?」
「好きにしなよ」
「うん。座る」
にこっと。人畜無害な顔で笑って、奏人はすとんと隣に座った。
「ゆずちゃん。ここ来るって珍しくない?」
「ん。久々だね。自分から進んでは」
「なんかあった?」
――一瞬、さっき以上に心臓が飛び跳ねた。
「なんで?」
「みんな、心配そう」
「みんな?」
奏人は頷いて、そっと長い指を空中に向けた。森へ。それから、川へ。
「神さま、みんな。ゆずちゃんを心配そうに見てる」
「……神さま、ね」
「またかって思ってる?」
「思ってる」
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