プロローグ

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 〇県市立K小学校 6年2組 教室内 大久保 徹  学校帰りに少し探検に行ってみようと誘われた。  なんでも、あの家だった。  ぼくは、知っているから。あまり近寄らないようにしていた。  窓際からのギラギラとした太陽は、ぼくの机に大きな影を生み出している。  この教室で、友達の一番大きい男の子の影だった。 「なあ、ちょっと見てくるだけだよ」 「うん」 「いいだろ。そうだろ」 「うん。あまり気は乗らないけど。……いいよ」  6-2の教室の喧騒が、急に静かになった気がした。    下校時間になると横断歩道を渡り、あのゴミ屋敷まで歩いていく。大きな男の子は興奮している。なんでも、ゴミ屋敷だし。それは当然なんだ。 「ねえ、外から少し見るだけにしようよ」 「バカかお前。家の中を見るんだろ」 「えええええ」 「だって、見たいじゃん」  付近はシンと静まり返って、学校の教室から何もかもが無音だった。  まるで、ぼくだけが音の無い世界にいるみたいだ。
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