約束

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「かれかの? およめさんじゃなくて?」  小さな智空はあどけない瞳で小さな私を見て言う。   「かれかのとおよめさんはいっしょなんだよ!」  やけに威張って言う小さな私。智空はそうなんだと呟いて、ニカッと笑って言った。   「ふぅん。いいよ。おれも、あいとかれかのになりたい」    その答えに、小さな私はどんなに嬉しかったか。表情を一気に明るくして、ニカッと笑う私。 「やくそくだよ!」   「うん!」    そう言ったあと二人で赤い風船に願いを込めて飛ばした。  『“かれかの”になった時は赤い風船を飛ばして神様に報告しよう』って言って。  なんで赤い風船をとばすのか、意味はわからない。  でも、小さな私は赤が好きで、小さな智空と小さな私は風船が好きだったから。  願いを込めて飛ばした風船。だから、叶ったら飛ばす。  そんな単純すぎる理由。いや、理由なんてなかったのかもしれない。ただなんとなくそうしたかったからかもしれない。    赤い風船に結んだ幼き日の約束。  10年経った今でも、“私は”覚えてるよ……。
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