日常

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 好きなものは可愛いもの。  おしゃれも自分磨きも大好き。  そんな私の髪の色はミルキーブラウン。昔から細い髪の毛は自分でチャームポイントだと思ってる。  化粧直しは日常茶飯事。一日に五回は基本でしょ。  と、いっても濃いわけじゃないんだよ?  日々可愛いと思われたくて努力中な私。  倉元 愛心。それが私の名前。みんなは私のこと、こころ、とか愛ちゃんとか愛って呼ぶの。  ニックネームをつけられるのは好き。なんか、その人の特別になれた気がしてなんだか嬉しい。 「こころ!」 「んむっ!」  イキナリ飛び込んできた男の声とおでこへの衝撃に、私はハッとする。 「きょ、京ちゃん?」  私に声をかけ、デコピンをお見舞いしたのは栗村 京(クリムラ キョウ)。通称京ちゃん。  京ちゃんは私のことを『こころ』って呼ぶ。  京ちゃんはため息をつきながら、赤茶の短い髪を掻きまわす。  少しおっかない細い目は、私的には京ちゃんのチャームポイント。って、前に言ったら頭を小突かれた。 「帰るぞ」 「智空と実玲は?」  智空と実玲は私と京ちゃんの友達。というか、親友かな? 智空は幼稚園からの付き合い。家が近所なこともあって、幼馴染ってやつかな。 「委員会で遅れるって言ってただろ? だから俺らで先に帰ろ」 「うっ、うん……」  京ちゃんなんか怒ってる? 「わかったら早く帰る用意してね。何考えてたのか知らないけど、帰りのチャイムから十分も絶ってるから」  不意に黒板の上にある可愛くもなんともない時計に目をやると、確かに下校時間から十分も過ぎていた。 「えっ、嘘!? ごめん!」  私は慌てて鞄に教科書を詰める。ぐしゃっとか音がして、詰めなおしたりなんだりしていると、京ちゃんのわざとらしい大きなため息が聞こえたような気がした。 「あぁ、そういえば」 「?」 「弘先輩が」 「弘先輩がなに!?」  弘先輩とは、横谷 弘(ヨコタニ ヒロ)先輩。  ちょっと気になってる人。  実は私、こう見えても美術部で(ほとんど幽霊部員に近いけど)、本当は別に部活なんか入る気なんか無かったんだけど………。  弘先輩が玄関前でたくさん無視されながらも美術部勧誘をしていたのに惹かれてしまったのです。
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