10・星

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「どうも俺とマヤを心配してるヤツが居てね。教えてくれたんだよ」 「━━もしかして聖さん?」 「ご想像に任せる。……ペンダントを選んだのは別に桜小路くんからのペンダントに対抗したわけじゃなくて……身に着けていられる物を考えたらペンダントになってしまったんだ」 「あ、確かに。イヤリングとか指輪は芝居の邪魔になる事があります」 舞台ではその世界で成り立っているので、そぐわない装飾品は身につける事ができない。 例えば『忘れられた荒野』の狼少女ジェーンが装飾品を着けていたらおかしい。また服を着て、着けていられるのならぱ、見えないようにするのは当たり前。 独身の役で指輪も邪魔になる。 『ふたりの王女』のような貴族の服でカジュアルな装飾品も違和感しかない。 舞台上では姿も衣装も全てが、その世界でないといけない。 ペンダントなら、稽古中でも邪魔にはならないだろう。 真澄もちゃんとわかっていてペンダントを選んだのだ。 「お揃いのペンダント見た時は嫉妬したがな」 「ふふっ、本当に『ヤキモチ妬き』ですね。大丈夫です。あたしはこのペンダント、…ずっと着けてますから。……と、あたし貰ってばかりで何もあげてない。……昔に『紫の薔薇の人』がもっと年配の方だと思って膝掛けくらいしか…」 「……欲しいのはいつも『マヤ』だけどな。━━…そうだな、できれば物ではなく━━…マヤの阿古夜が観たい。前から言っていたが、俺はマヤが舞台に立つのが本当に好きなんだ」 「あたし……きっと紅天女になります!……阿古夜になって、すべてあなたに届くように……」 ふと月影先生の『紅天女』が終わった時に言った言葉を思い出した。 『紅天女の恋は、わたしの恋でした。━━舞台の上の阿古夜の思いは、そのままわたしの思いとなり、阿古夜のセリフはそのままわたしの言葉となりました』 ━━━…月影先生、あたしはまだ紅天女にはなっていないけれど、あたしにもわかる時が…きました。 『魂を乞う、それが恋…━━出逢ってしまえば惹かれあい、近づきあい、どんなことがあっても離れる事ができない……━それが魂の片割れ━━』 ああ、きっと月影先生は舞台の上でその人に恋をし、愛しあったんだ。 だから月影先生の1人だけの『紅天女』の舞台でもその思いが皆に伝わっていたんだ。 ━━月影先生は魂の相手と結ばれていたから━━
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