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1・信じたい言葉
1・信じたい言葉
━マヤは紅天女の試演の前だというのに自分を失ってしまっていた。
あのワンナイトクルーズで真澄とやっと気持ちが通じたと思っていたのに…
「信じていて」「待っていて」━心からの言葉だと思っていたのに…
紅天女になれない。なる前に『北島マヤ』から抜け出せない状態だった。
ただ涙が溢れ、頬から落ちる涙で前なんか見えない。
当然ながら演出家の黒沼には
「しばらく休め」
と、言われた。
アパートに1人きり膝を抱えているといろんな思いが駆け巡る。
阿古夜は天女だ。私は今はただの恋に落ちた人間で天女なんかなれない。
みんなにも迷惑かけている。でも、どうしたらいいの?
『私』から『阿古夜』が生まれてこないの。
阿古夜の仮面を被れないの。
今までどうやってきたの?…わからない。
ただ、今は苦しい。信じたいのに信じれなくて、そんな自分が…
恋に落ちている自分が嫌いで、速水さんが好きで…
好きで…好きで苦しい。
涙が止まらない。
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