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それから2人は裸足になって砂浜を歩いた。 「うわあ!本当にキュッキュッって音がする!」 「気持ちいいだろう?滑らないようにな」 足首まで海に浸り、歩いていると本当に砂浜が鳴った。波は日の光を反射して光っていた。 とても気持ちよく、和んで散歩していた。 「マヤ、ほら、そこの岩場」 「え?」 「カニがいる」 2人で岩場を覗き込むと、波打ち際に小さなカニが所々にいて、泡を出している。 「わ、可愛い!」 「結構いるんだ。多分この岩場が住処なんだろうな」 マヤははしゃぎながら、また違う『真澄』を見たような気持ちになった。 すごく少年ぽくて、無邪気。言ったら怒られそうだけど、同年代みたい。 年の差、感じない。 でもきっと遊園地とかは嫌がるかな? そんな事を考えて少し笑った。 「どうした?」 「なんだか…年の差感じなくて。真澄さんとならきっとどこでも一緒に楽しめるんだろうなって」 「そうだな。…ずっと誰かと一緒に楽しむって事をしてこなかったから、とても嬉しいんだと思う」 そう言った真澄は過去を思って言っているのではなく、純粋にマヤとの行動を楽しんでいるような笑顔を見せた。 マヤも嬉しくなり笑顔になっていた。 「マヤ!」 「え?」 いきなり岩場に大きい波が当たり、マヤは頭から飛沫がかかるはめになってしまった。 「…う、うそお!びしょ濡れ!」 「あははは!言うのを忘れてた。たまに潮の流れがぶつかって、ちょうどこの岩場で高くなる時があるんだよ」 「先に言ってくださーい!うわーん、しょっぱいー!」 「あははは!戻ったらまずはシャワーだな」 そう言って真澄がマヤに手を差し出した。 その手を握り、2人は来た方向へ戻って歩き出した。 「マヤ、『四季の歌』は知ってるか?」 「えーと、『春を愛する人は~♪』って、違いましたっけ?」 「合ってる。歌詞は覚えているか?」 「小学生の頃に習ったような…」 マヤは思い出しながら小声で歌ってみた。 「春を愛する人は♪心清き人~♪すみれの花のような♪ぼくの友達~♪…2番は夏だったかな?…夏を愛する人は♪心強き人~♪岩をくだく波のような♪ぼくの父親~♪…3番は秋、えーと、えーと…」 「秋を愛する人は♪心深き人~♪愛を語るハイネのような♪ぼくの恋人~♪冬を愛する人は♪心深き人~♪雪を溶かす大地のような♪ぼくの母親~♪」 真澄が歌いだしたので、思わずマヤはポカンとしてしまった。 「真澄さん、歌うの初めて…」 「ははは!なんでだろうな、浮かれてるのかもしれないな」 そう言って照れた笑顔を見せた。 まさに『少年』としか思えなかった。
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