2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
4月16日
ソウスケさんの代わりに、旦那様が花の世話を手伝ってくださることになった。
停止したソウスケさんの手を、無言でそっと握る旦那様の横顔が頭から離れない。
昨日あんなことがあったのに、旦那様は気丈に振る舞われている。
「花は育てたことがあるから、私に任せなさい」と明るく笑う旦那様。
そんな姿を見ていると、私の方が泣いてしまいたくなる。もちろん、涙なんて流せないのだけれど。
旦那様は昔、ソウスケさんとカーネーションを育てたことがあると教えてくれた。
奥様に告白をする際にピンクのカーネーションを贈りたくて、自ら育てたのだそうだ。
とても素敵なお話だと思う。旦那様の執筆された小説にそんな場面があったような気もするが、あれはどのお話だっただろう。
なぜピンクのカーネーションなのか尋ねると、花言葉が気に入ったからだという。
上品、気品、美しい仕草。そんな花言葉がまさに奥様にぴったりだと思ったらしい。
私もアスターの花言葉を調べてみようかしら。
旦那様は、「女性に花を贈るというのは特別なんだ」と仰っていた。
思わずあの桜のことを思い出す。ただ道に落ちていた桜の花。あれは、違うのに。
考えても考えてもわからない答えを、もう何日も探している気がする。
私は一体、何の答えを探しているのだろう。
ちなみに、アスターの芽はまだ出ない。そろそろ発芽しても良い頃だと思うのだが…。
最初のコメントを投稿しよう!