ユメノ日記帳

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4月16日 ソウスケさんの代わりに、旦那様が花の世話を手伝ってくださることになった。 停止したソウスケさんの手を、無言でそっと握る旦那様の横顔が頭から離れない。 昨日あんなことがあったのに、旦那様は気丈に振る舞われている。 「花は育てたことがあるから、私に任せなさい」と明るく笑う旦那様。 そんな姿を見ていると、私の方が泣いてしまいたくなる。もちろん、涙なんて流せないのだけれど。 旦那様は昔、ソウスケさんとカーネーションを育てたことがあると教えてくれた。 奥様に告白をする際にピンクのカーネーションを贈りたくて、自ら育てたのだそうだ。 とても素敵なお話だと思う。旦那様の執筆された小説にそんな場面があったような気もするが、あれはどのお話だっただろう。 なぜピンクのカーネーションなのか尋ねると、花言葉が気に入ったからだという。 上品、気品、美しい仕草。そんな花言葉がまさに奥様にぴったりだと思ったらしい。 私もアスターの花言葉を調べてみようかしら。 旦那様は、「女性に花を贈るというのは特別なんだ」と仰っていた。 思わずあの桜のことを思い出す。ただ道に落ちていた桜の花。あれは、違うのに。 考えても考えてもわからない答えを、もう何日も探している気がする。 私は一体、何の答えを探しているのだろう。 ちなみに、アスターの芽はまだ出ない。そろそろ発芽しても良い頃だと思うのだが…。
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