喧嘩の多いカップル

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「なんでだよ。喧嘩なんか、今までもしょっちゅうだろ。別れ話も何回もあった。それでも毎回乗り越えて、6年以上も続いてるじゃないか。今更別れてどうすんだよ。まさか気になる(ヤツ)でもいるのか?」 俺が探りを入れるように聞くと、那津は首を横に振った。 「そんなんじゃなくて、ちょっと一人になりたくて。これ以上一緒にいてもさ、お互い対立してばっかで(らち)があかないでしょ?」 「だったら別れなくても少し距離置くとか……いやそこまでしなくても、部屋を別々にすればいいんだ。もう少し広い部屋を借りよう。な?」 「そんなお金ないこと、自分がいちばんわかってるんじゃないの?」 「くっ……。それを言っちゃお前よぉ……」 稼ぎが低いことを遠回しに言われたようで、痛いところを突かれ、また沸いてくる怒りを何とか抑える俺。 連日、喧嘩ばかり。確かにこれじゃあ堂々めぐりだ。もう俺たちは"潮時"なんだろうか。別れて別々の道を歩んだほうが賢明なのだろうか……。 強い不安を感じつつ、頭の中で切り抜ける方法を模索する。すると、いい案を(ひらめ)いたので那津に伝えた。 「那津。お前の気持ちは理解した。俺の態度に不満があるんだろう?それはこれから改める。だから別れたくない。どうしても別れたいと言うのなら、最後に一度だけチャンスをくれ!」 「チャンス?」 「ああ。今ちょうどカタールでサッカーワールドカップが開催されてるよな?」 「うん、それが?」 「俺は優勝経験のないベルギーをずっと前から応援してる。FIFAランキングも2位でかなりの強豪国だ。だからもし今大会でベルギーが優勝したら、仲直りして交際を続けてほしい。逆に他の国が優勝ならお前の好きにしていいぞ。別れたいと言うなら受け入れる。それだから頼む、12月19日の決勝戦までは俺の側にいてくれ。お前だってワールドカップを楽しみにしていただろう?」 俺は賭け事のように、サッカーのワールドカップの勝敗を使って無茶なお願いをした。また怒られるかと思いきや、那津から意外な返事が返ってきた。
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