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再会の女神
少しばかり頭を整理したのは良いものの、女神に対するイライラを増幅させながらシャワールームから出る。
「――ふぅ。さっぱりしたー……っと。あ」
「――!!!」
ゴトンッ。
何故か落ちてきた落下物との衝突により、綺麗な赤い絨毯が敷かれた床から重い音が響く。
袋から勢いよく飛び出す缶詰や挽き割り用のコーヒー豆の袋。
「な、な、なんで服着てないのぉぉーー!!?」
「えええええ!! なんでもう居るのーー!??」
悲鳴に近い高音で俺を拒否しながら両手で顔を覆うアクアリウム。
疑問が混じった驚きの声をあげ、両手で大事なものを隠す俺。
「サイッテーだねっ! ルークス君! 僕の裸を見ただけじゃ飽き足らず自分の粗悪品まで見せびらかすのかい!? あーーもーーこの変態!」
「な、な、なにをーー!? お前こそ買い物行ってくるとか何とか言ってたじゃねーか! あと俺のは断じて粗悪品ではない! 新品だ! あ……」
何故かノリで自分の尊厳物が新品であることを暴露してしまった俺は、急いでタオルを腰に巻き付けアクアリウムに交戦の意思がないことを伝える。
「ほら、もう大丈夫だからこっち向いてくれ」
「――うぅぅ……君は水神である僕をからかっているのかぁぁー……」
普段は物知り顔で話すアクアリウムもこの時ばかりは、子猫のように弱々しい声で悶えている。
「――はい! これ着替えて!」
流石準神様であるだけはある。
食料と着替えまで買って来てくれるとは。
俺は真っ赤に色付く水神様から服をありがたく頂戴し、袖を通す。
「はぁー。君って人は僕以上に磊落な性格のようだねー」
「そういうお前こそ乙女チックな反応するよな」
まるで成熟した大人な男性が年増な歳下を揶揄う口調。
「うるさーい! 僕は千七百歳だぞ! 一番そうゆうお年頃なんだ普通分からないの!?」
いや、お年頃と言われても。
普通の人間そんなに生きれないっす。
多分だが人間の一七歳くらいなのだろうな。
そtれならこの反応に合点がいく。
「それより早く寝た方がいい。話はその後だよ。ほーらベッドに放った入ったー」
「で、でもそんな急に寝れるわけが……」
「癒しの神類よ、この者に幾許の安らぎを与えたまえ 『神聖魔導 睡』」
詠唱終了と共に、俺の意識は別の世界に連れていかれる。
「――母様……どうか」
――この感覚。俺は寝ているのか?
ここまで意識がはっきりしている夢を今まで見た事がないが……
いや違うな。
目はしっかり開いている。
だが視界には延々と続く暗闇しか映ってこない。
耳は聞こえてる。
だが鼓膜を揺らす音波はどこにも無い。
立っている感覚もある。
だが、体重を感じない。
こんな現象が起こり得る可能性を考えると、あの人の存在が関わっているに違いない。
「まさかここで登場とは……本当に貴女はご趣味が悪いですねー」
闇に輝く冷徹な金色の瞳を美しく感じると同時に、自分はこの神の掌で遊ばれているモルモットであることを悔しくも実感する。
「やぁ。無限にようこそ。私の大切な大切なルークス・アルフレッド君」
ほくそ笑む美麗な表情が、逆に不気味であった。
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