私を頼りなさい

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私を頼りなさい

「人は他人に認知された時、初めて自分が存在している事を認めることが出来るって知ってるかしら?」  言葉自体は知っていたがこの世界の人間にもそうゆう哲学的思想者がいるのだろうか。 「もしあなたが、自分を信じれなくなった時は私を頼りなさい」 「もしあなたが、自分の存在に疑問を持ったら私を頼りなさい」 「もしあなたが、誰からも必要とされなくなったら私を頼りなさい」 「私じゃなくてもキアちゃん、ヴァイス、ギルドの皆があの星々のように照らし合い、暗闇の中でもあなたを照らしてくれる。だからあなたもその人達を照らしてあげなさい。あなたにはその力ある」 「ララ様の願いを叶えることを優先するのは素晴らしいことよ?でもあなたは決して一人じゃない。私たちの中ではあなたはただの同じギルドのルークス・アルフレッドよ」  ――ポヨン。  二度目の幸福の感触。  するとシャルルさんはニヤリと笑った。 「こうゆう青年が落ち込んでる時、余裕のあるお姉さんなら、そっと抱きしめてその胸元から、エネルギーを注入する。だったかしら?」  夜空の下、絶世の美女の色気ムンムンなお姉さんが自分の顔を胸に乗せてくれる。  男なら一度は夢見るシチュエーションだ。  しかし、その感触は今まで俺が思い描いていたような感情を呼び寄せる事はなく、ただ一人で泣き喚く男の安息の地だった。  ――「ただいま戻りましたよ。ララ様」  ララはソファーの背もたれに長く美しい髪の毛を預けながら、丸いクッションを抱えちょこんと座っている。 「さっきは……ごめんなさい」  こちらを申し訳なさそうに上目使いして謝罪の意を伝えてきた。 「ララ。君の願いの件は今は考えないことにしよう。然るべきが来たら話して欲しい」  またも琥珀色の瞳が輝き出し、肩が小刻みに揺れる。 「でもでも。何も覚えてないルークスを巻き込むなんて……」 「大丈夫。俺はもうこの世界に居場所があるから。巻き込むなんて考えず、自分のタイミングで話してくれ」 「だから明日からうちのギルドに来てくれ!」  それを聞いた、ララが久しぶりにニコッと笑った。  俺はこれを見るために異世界に来たのかもしれない。  そう自信を持って言える俺がいた。  シャルルさんからエネルギーを貰ったからか? と俺も久しぶりに脳内でふざけてみたが、あの場所はもう二度と借りることは無いだろう。何故かそう思う。  次の日――  はい。困りました。  ギルドに入るなり咽び泣いてしがみついてくる男に捕まり大変です。 「どぅーーーぐずー! えぐっ、えぐっ、あびがおーー! だずげでぐででー!」  ちょっと待って嘘だろコイツ。今鼻水を俺の服で拭いたんですけど。あり得ないんですけど。  こいつは昨日キアのついでに助けたイフラルという性格破綻者。  ギルドでの俺のイメージはオールFの最弱の無適性者から、一瞬でモンスターから二人の仲間を助けたスーパーヒーローにジョブチェンジしているらしい。 「分かった分かった! 頼むから離れてくれ!」 「じ、じゃ今日は俺に酒奢らせてくれ!」 「お! なんだなんだイフラルの奢りか!?」 「さすが! 死にかけた男は金の使い方が豪快だな!」  当然抵抗するイフラル。  いきなり後ろからゴリゴリのおねえに股間を鷲掴みにされるイフラル。  昨日、全員の飲み代を出す約束を勝手にされていたことが発覚。  さすがならず者の溜まり場。金の匂いには一際敏感だ。  気づけば見渡す限り、ジョッキを持って頬を赤らめている野郎共しかいない。 『まずいな』一抹の不安が俺を支配した。  今更ではあるが、こんなオンボロギルドにララを誘ったのは、果たして正解だったのだろうか?   え?ララが心配?違う違う。こいつらがあの可愛いララをほっとくわけないのだ。  となると、変な絡みをされたシャルルさんが黙っている訳が無い。多分イフラルあたりが半殺しにされるのが目に浮かぶ。  そんな不安を抱えていると、ギルドの扉が勢いよく開いた。 「ルークス! ルークス・アルフレッドはおるかー!」  えええ……マジで何やってんのあの子。  背後にシュメイラル一の回復魔道士を従えた小さな可愛い女の子が、ギルドのスーパースターを元気に呼んでいる。  明らかに情報が詰め込まれすぎてる。しかも蓋を開けてみると彼女は伝説の『華姫様』というおまけも満足の内容だ。
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