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「とにかく、戸締りだけはきっちりしておかないとね」
お母さまは使い終わった食器を、手早くまとめて、シンクへ運びます。
「ねえ、桃香、お母さん、玄関の戸締り、もう一度見てくるから、悪いけど、食器だけ洗っておいてくれる? お鍋は、あとでお母さんが洗うから」
桃香というのは、あたしの名前です。
お母さまの言いつけに、あたしは「はーい」と元気よく返事し、自分の分の食器をシンクへ運びます。
そして、お母さまが玄関のほうへ行く間に、シャカシャカとスポンジを泡立て、食器を洗いはじめました。
と、そのときでした。
システムキッチンのとなりにある裏口の戸をバタンとあけて、ふたりの男が飛びこんできたのです。
ふたりとも、黒っぽいTシャツに同じ色のチノパンという格好で、服を着ていても、いかつい体つきなのがわかります。頭にはフランケンシュタインのゴムマスクをかぶっています。どちらも手に包丁を持っていて、ひとりがそれをあたしに突きつけました。
「さわぐなっ」
ドスのきいた声で怒鳴られましたが、思わず「きゃっ」と叫んでしまいました。
「さわぐなって言ってるだろう」
また怒鳴られました。
そこへ、
「どうしたの、桃香?」
声がして、お母さまがもどってこられました。
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