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ミステリーマニアの上原と、虫マニアの松井、社長の周りには個性的な人間が集まってくるらしい。
「そろそろ、温泉に向かいます?」
社長は、大きな岩を椅子代わりにして足をぶらぶらさせていた。
「松井は?」
「そこにいますよ」
写真を撮り終えたのか、松井がデジカメのデータを確認している。
「よし行くか」
社長が格好つけて岩から飛び降りて、尻餅をついた。
「いたたたた」
「凄い音がしましたけど、大丈夫ですか? 起き上がれます?」
社長を支えて起こそうとした時、滝の水量が増えたように見えた。辺りに霧が立ち込め、側にいるはずの社長すら、輪郭がぼやけて見えた。
「何だ? おい、三田!」
「いますよ。こういう時はじっとして……」
すぐ側を滝に向かって歩いていく松井の背中が見えた。
「松井君、危ないって!」
「おい、三田あれ」
「え?」
霧が晴れ、滝の裏に大きな穴が出現した。
「あれ、洞窟じゃないか?」
社長が尻をさすりながら立ち上がる。
「そんなこと、観光案内には書いてなかったと思うんですけど。えっ、松井君!」
「あん?」
松井が滝の裏側に入ろうとしていた。
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