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回る社長、社員旅行へ行く
「今度の社員旅行は、知人が経営する山梨のペンションに泊まることにしたぞ」
社員の皆が安堵の笑みを浮かべた。社員を集めて何の会議だと内心ドキドキしていたのが分かる。
「三年近くコロナ禍で行けなかったからな。皆でうまい空気でも吸いに行こうじゃないか」
転職組の若い二人の社員は曖昧な笑みを浮かべた。無理もないだろうなと思う。
「全員参加ですか?」
「何だ、三田。行きたくないのか?」
社長が意外そうな顔をする。
「用事がある人もいるかなと」
転職組が顔を見合わせて、発言権をなすりつけ合っているように見えた。
「今回はペンションを一軒借りたんだが、格安にして貰う代わりに平日になったんだ。無理強いはせんが、参加しない場合は電話番で会社に来てもらうことになるだろう」
転職組は苦虫を噛み潰したような表情になった。いちいち、反応が似ていて面白い。
「行きます」
二人はおずおずと挙手をした。
「分かった。全員参加だな」
社長はニタリと笑い、「後は三田、頼むな」と言って出かけて行った。
「ゴリ押し社長だけど、食事には妥協しない人だからそれなりに楽しめるよ」
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