11人が本棚に入れています
本棚に追加
そうは答えたものの、完全に不安は拭えなかった。
金曜日の早朝、三田は社長を助手席に乗せ車を走らせていた。
「結局、花見は出来なかったな」
「ええ。でも、社員旅行は予定通り開催出来たので良しとしましょう。あっ! 叫ばないでくださいよ。あと、トイレは早めにお知らせください」
社長は開けた窓を渋々閉めた。
「うぬぬ」
「もうすぐ皆さんと合流ですから」
結局、柴田は上原に懇願されて松井が運転する車に同乗しているらしい。
「今日は甲州牛で地酒をたらふく飲むぞ!」
「だから、突然叫ぶのはやめて下さいって言ってるでしょう」
「窓、閉めてるぞ」
「そう言う意味では!」
小競り合いしている内にサービスエリアに到着した。社長はさっさと車を降り、トイレにのしのしと歩いて行った。食堂へ行くと、上原と松井が人数分の席を確保していて、こちらに気づいて手を振った。
「三田さん、お疲れ様です」
「上原さん、松井君も運転お疲れ様。柴田さんは?」
「今、トイレに」
「そう。二人は注文した?」
「いえ、全員が揃ってからと」
「律儀に待ってたら、全員ラーメンにされるよ」
「えっ」
最初のコメントを投稿しよう!